CELL
2013.12.20
【トークライブin CELL】第9回:稲積包昭先生が語る「竹原常太と英語辞書の世界」が開催されました。
2013年12月18日(水)にメディアライブラリーCELL CE104にて、第9回トークライブが開催されました。
今回は総合文化学部の稲積包昭先生のお話を伺いました。タイトルは「竹原常太と英語辞書の世界」です。
大手前大学図書館に「竹原文庫」というコレクションが収蔵されていることをご存じですか?
先駆的な英語辞書『スタンダード和英大辞典』(宝文社)の編纂で知られる英語学・英米文化の研究者・竹原常太氏(1879-1947)の貴重な蔵書がどのような経緯で大手前大学図書館に収められることになったのか。竹原氏の蔵書目録作成や研究に従事された稲積先生ならではの貴重なお話でした。
稲積先生の竹原常太研究と本学の「竹原文庫」誕生を導いたきっかけは、先生のもとで神戸大学大学院生として在籍していた堤美佐子さんが竹原氏を研究テーマに取り上げたことに始まります。竹原氏に関する僅かな情報を、細糸を手繰り寄せるような追跡作業で探り当て、ご遺族から蔵書整理を任されるに至ったということでした。現在刊行されている『竹原文庫蔵書目録』は、稲積先生と堤さんがその膨大な蔵書の一冊一冊を記録した成果そのものです。根気のいる作業とお二人の熱意はご遺族の信頼を獲得し、転居に伴う蔵書処分の相談を受けることとなります。処分を検討されていると聞いた稲積先生は「大手前大学へ「竹原文庫」としてこの蔵書を残せないだろうか」という案を思いつき、本学教員の森道子先生を通じて名誉総長・福井秀加先生(当時理事長)に打診されたそうです。その申し入れを福井先生が快諾されたことで竹原氏の蔵書は大手前大学図書館に「竹原文庫」として所蔵されることになったのでした。
竹原氏の辞書が既存の英語辞書とはどのような点で一線を画すものだったのか。それまでの辞書がアカデミックな素地を前提とした例文や表現を多用していたのに対し、竹原氏の辞書は徹底して実用重視を目指したものでした。渡米して現地の新聞や雑誌から語彙や文章を抜き出し、実際に使われている言葉や言い回しを用いてその典拠も明記しました。英語と米語・文語と口語の違いや正確な発音表記にもこだわって“時代の言葉”を反映した「生きた言葉のための辞書」という新しい語学辞典の姿を打ち出したのでした。稲積先生は「辞書」というものは編者の“こうあるべき”という方針によってその趣旨や存在意義が全然違うものになり、同時代性を反映した実用的な辞書もあれば、古い言い回しや編者の個性が色濃く出た読み物のような辞書もあるのだ、ということを様々な辞典類から示唆して下さいました。古い文学作品を読むにはその作品が書かれた時代の言葉を知らなくてはならないように、辞書もまた時代や使い方を選んで付き合ってゆく必要があるのではないか、と、普段何気なく使っている「辞書」について考えるきっかけとなりました。
また稲積先生は、多くの辞典類の他にも竹原氏宛の坪内逍遥からの直筆礼状や当時印刷過程で使用されていた鉛版など珍しい品々をご持参くださいました。現在「竹原文庫」は目に触れにくい学外倉庫に保管されているのですが、この度の先生のお話は「竹原文庫」をクロ-ズアップする有意義な機会となりました。
今回は総合文化学部の稲積包昭先生のお話を伺いました。タイトルは「竹原常太と英語辞書の世界」です。
大手前大学図書館に「竹原文庫」というコレクションが収蔵されていることをご存じですか?
先駆的な英語辞書『スタンダード和英大辞典』(宝文社)の編纂で知られる英語学・英米文化の研究者・竹原常太氏(1879-1947)の貴重な蔵書がどのような経緯で大手前大学図書館に収められることになったのか。竹原氏の蔵書目録作成や研究に従事された稲積先生ならではの貴重なお話でした。
稲積先生の竹原常太研究と本学の「竹原文庫」誕生を導いたきっかけは、先生のもとで神戸大学大学院生として在籍していた堤美佐子さんが竹原氏を研究テーマに取り上げたことに始まります。竹原氏に関する僅かな情報を、細糸を手繰り寄せるような追跡作業で探り当て、ご遺族から蔵書整理を任されるに至ったということでした。現在刊行されている『竹原文庫蔵書目録』は、稲積先生と堤さんがその膨大な蔵書の一冊一冊を記録した成果そのものです。根気のいる作業とお二人の熱意はご遺族の信頼を獲得し、転居に伴う蔵書処分の相談を受けることとなります。処分を検討されていると聞いた稲積先生は「大手前大学へ「竹原文庫」としてこの蔵書を残せないだろうか」という案を思いつき、本学教員の森道子先生を通じて名誉総長・福井秀加先生(当時理事長)に打診されたそうです。その申し入れを福井先生が快諾されたことで竹原氏の蔵書は大手前大学図書館に「竹原文庫」として所蔵されることになったのでした。
竹原氏の辞書が既存の英語辞書とはどのような点で一線を画すものだったのか。それまでの辞書がアカデミックな素地を前提とした例文や表現を多用していたのに対し、竹原氏の辞書は徹底して実用重視を目指したものでした。渡米して現地の新聞や雑誌から語彙や文章を抜き出し、実際に使われている言葉や言い回しを用いてその典拠も明記しました。英語と米語・文語と口語の違いや正確な発音表記にもこだわって“時代の言葉”を反映した「生きた言葉のための辞書」という新しい語学辞典の姿を打ち出したのでした。稲積先生は「辞書」というものは編者の“こうあるべき”という方針によってその趣旨や存在意義が全然違うものになり、同時代性を反映した実用的な辞書もあれば、古い言い回しや編者の個性が色濃く出た読み物のような辞書もあるのだ、ということを様々な辞典類から示唆して下さいました。古い文学作品を読むにはその作品が書かれた時代の言葉を知らなくてはならないように、辞書もまた時代や使い方を選んで付き合ってゆく必要があるのではないか、と、普段何気なく使っている「辞書」について考えるきっかけとなりました。
また稲積先生は、多くの辞典類の他にも竹原氏宛の坪内逍遥からの直筆礼状や当時印刷過程で使用されていた鉛版など珍しい品々をご持参くださいました。現在「竹原文庫」は目に触れにくい学外倉庫に保管されているのですが、この度の先生のお話は「竹原文庫」をクロ-ズアップする有意義な機会となりました。